技能実習制度では、実習生が自分の意思で勤務先を変えること(転籍)は原則できませんでした。2027年までの施行が予定されている(2027年春頃の見込み)育成就労では、この点が大きく変わり、一定の条件のもとで「本人の意向による転籍」が認められます。受け入れ企業にとっては「せっかく育てた人材が流出しないか」が気になるところです。この記事では、育成就労の転籍ルールと技能実習との違い、そして企業ができる定着対策を、行政書士が解説します。
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「転籍」とは?技能実習との最大の違い
転籍とは、外国人が働く受け入れ先(育成就労実施者)を変えることです。育成就労での転籍には、大きく2種類あります。
- やむを得ない事情による転籍:倒産・人員整理・ハラスメントなど、本人の責任によらない事情がある場合(技能実習でも認められていた類型)
- 本人の意向による転籍:本人がより良い環境を求めて自ら転籍する場合(育成就労で新たに認められる類型)
この「本人意向の転籍」が認められた点が、技能実習からの最も大きな変化です。ただし、無条件ではなく4つの要件を満たす必要があります。
本人意向による転籍の4要件
- 同一の業務区分内であること(分野をまたぐ転籍は原則不可)
- 転籍制限期間(分野ごとに1〜2年)を経過していること
- 技能・日本語の一定要件を満たしていること(例:日本語能力試験N5~N4相当など)
- 監理支援機関・外国人育成就労機構・ハローワークによる職業紹介を通じて行うこと
つまり、就労開始からすぐに自由に転職できるわけではなく、一定期間・同じ分野・一定の技能日本語レベルという枠の中で認められる仕組みです。
転籍制限期間は分野ごとに1〜2年
本人意向の転籍ができるようになるまでの転籍制限期間は、分野別の運用方針により1年以上2年以下の範囲で定められます。技能の習得に時間がかかる分野(介護・建設・工業製品製造業など)は2年、その他の分野(宿泊・農業・漁業など)は1年とされる方向です。なお、2年とされた分野でも、受け入れ機関の判断で1年に短縮できる仕組みも設けられます。
| 分野の性質 | 転籍制限期間の目安 |
|---|---|
| 技能習得に時間を要する分野(介護・建設・工業製品製造業 等) | 2年(機関の判断で1年に短縮可) |
| その他の分野(宿泊・農業・漁業 等) | 1年 |
昇給の取り扱い
転籍制限期間が2年の分野では、当該分野の直近の昇給率を基準に昇給率を毎年設定・公表し、1年目から2年目にかけてその昇給率で昇給させることが求められる方向です。長く働くほど処遇が上がる仕組みにすることで、早期の転籍を防ぎ、定着を促す狙いがあります。
企業ができる「定着対策」
本人意向の転籍が可能になる以上、企業は「選ばれ続ける職場」であることが重要になります。次のような取り組みが定着につながります。
- 適正な賃金と明確な昇給:地域・同業の水準を意識し、頑張りが処遇に反映される仕組みにする
- キャリアの見通し:特定技能1号・2号への道筋を示し、長期的に働ける将来像を共有する
- 生活面のサポート:住環境・日本語学習・相談体制を整え、安心して暮らせるようにする
- 良好な人間関係:現場でのコミュニケーションや母国語での相談窓口を確保する
いつから始まる?
育成就労制度は2027年4月1日施行予定です。転籍の細かな要件や分野別の期間は、施行に向けて公表される運用方針・政省令で最終的に定まります。制度開始前から、賃金・キャリア設計など「定着の仕組み」を準備しておくことをおすすめします。
まとめ
育成就労では、同一分野・転籍制限期間(1〜2年)経過・技能日本語要件・職業紹介経由という4要件のもとで本人意向の転籍が認められます。技能実習からの大きな変化であり、企業には「選ばれる職場づくり」がこれまで以上に求められます。制度の詳細は今後の運用方針で確定するため、早めの情報収集と準備が大切です。
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